数事と人事 株式会社トップページ給与制度・人事評価制度をつくろうとする中小・ベンチャー企業が知っておくこと

給与制度や人事評価制度を導入しようという
中小企業・ベンチャー企業経営者が選ぶとしたら

給与制度をつくりたい、人事評価制度の導入を検討しているという中小企業・ベンチャー企業の経営者向けに、まずは一般的な話として、次の項目をご紹介します。

  1. 年功給、年功制度
  2. 職能給、職能資格制度
  3. 職務給、職務等級制度
  4. 年俸制や業績連動型賞与

1.年功給、年功制度

改めて説明するまでもないかもしれません。
この年功給が嫌だから、給与制度をつくりたい、人事評価制度を導入したい、という思いにいたったのかもしれません。
年功給を嫌う経営者は、実に多いものです。
その理由は、給与が自動的に上がるから、ということだと思います。
年功の要素を細かく見ると、「年齢」「勤続年数」に分かれます。
それらを積み重ねるごとに給与が高くなるのが「年功給」です。

一般的に「年功制度」は悪者扱いですが、メリットもちゃんとあります。
メリットとデメリットを公平に見てみましょう。

<年功給、年功制度のメリット・デメリット>

メリット デメリット
  • 新規入社と定年退職が毎年定期的に行われるように年齢層が構成されていて、毎年同数の社員の出入りがあるとすれば、総人件費はほぼ毎年一定になる。
    (ベースアップ等による人件費の増加は別の話です)
    →大企業のような組織にうまくあてはまる仕組みと言える。
  • 社員を社内で教育し、熟練者や管理者を長期にわたって育てる環境には「年功制」はマッチする。
  • 社員が経済的に安定し、安心して長期的に仕事に打ち込める環境をつくれる。
  • 年齢や勤続年数で給与を決定すると中途採用者の給与決定について、もともといる社員とのバランスをとる必要が生じる。 
    →中途採用の多い中小企業・ベンチャー企業では「年功制」はこの面では機能しにくいと言える。

年功給は人件費が毎年増加すると思われている感がありますが、それは個人を見た場合の給与額であって、会社全体でみると総人件費は変わらないのです。
給与が高額になった高年齢者は退職し、給与が低額の新規採用者と入れ替わるからです。
その他、メリットであげた点は「長期的視点」で考えると結構重要なことです。
自動的に給与が上がる年齢や年数に上限を設けるなどの工夫により、若年層だけには年功制をあてはめるという方法もあり得ると思います。

年齢を重ねれば経験が増える(?)。経験が増えれば能力が増す(?)。その能力を量る必要がある。
能力を量るのは難しいから形式的な基準として年齢というモノサシを利用する。
という面が「年功制」にはあります。

こう考えると、この「年功制」は人事評価を放棄しているようにも見えます。
人間には他人に対して正当に評価されたい、認められたいという欲求があります。
その欲求が満たされないとその人間には「不満をもつ」という現象が現れます。
不満をもった人間は最高の能力を発揮しない、最高の能力を発揮しなければ最高の成果を残しにくい、という連鎖は明らかだと思います。

でも逆に言えば、正当な評価を行う仕組みがあれば、きちんと認めてあげられれば、この点の「年功制」のデメリットは解消できることになります。

2.職能給、職能資格制度

従事する仕事(=職務)の性質や種類により、仕事(=職務)を遂行するのに必要な能力(=職能)を判定し、その結果にもとづきあらかじめ規定された賃金表(賃金テーブル)によって支給する給与制度です。
つまり、能力(=職能)が高いと判定される人が高い給料をもらうことができる、という仕組みです。
この「職能給」の給与体系を中心に据えた人事制度を「職能資格(等級)制度」と呼びます。

職能給、職能資格制度を運用するためには、社員の能力を判定する「人事評価」を行うことが必要になります。
能力を職能給に反映させる方法として、次の3つの要素を評価の柱とすることが一般的です。

(1) 情意評価

規律性や責任性、協調性、積極性などを評価の軸にし、仕事に対する意欲や態度をみる項目。
そのものズバリ「意欲評価」や「態度評価」と言われることもありあます。

(2) 能力評価

この部分で本人の保有能力をみます。
知識や技術、技能といった「基本能力」、問題対応力や対人対応能力といった「習熟能力」、その他、実行力・情報収集力・分析力など、会社、職種、職位等によって必要な事項を評価項目とします。
この「能力評価」は“評価技術”高いことが要求されます。

(3) 成績評価

その社員の業務成績=結果を評価する項目で、「業績評価」と表現されることもあります。
この部分だけをピックアップした人事評価制度が「成果主義人事制度」になるわけです。

<職能給、職能資格制度のメリット・デメリット>

メリット デメリット
  • 社員の自己啓発につながりやすい
    (職能要件書=本人のドライビングマップ)
  • 社員育成について組織の統一が図れる
    (職能要件書=人材育成の設計図)
  • コンピテンシーを利用しやすい
    →「コンピテンシー」とは、自社内のハイパフォーマー(高業績者)の具体的な行動特性のことで、それを人事評価や人材育成、選考採用の際の基準や指針として参考にしようというもの。
一見「能力主義」とも見えるが、次のような運用上の矛盾を含んでいる。
  • 保有能力の高さは、仕事がデキる・デキないというのと必ずしも一致するわけではないという矛盾
  • 能力の評価は難しい(=運用が難しい)こと、また、「能力と無関係な自動昇格制度という仕組み」や「能力は下がらない」という認識などから、年功的運用に傾き、昇進・昇格に速いか遅いかの差はあれ、結局は年功制と同じ結果になるという矛盾

3.職務給、職務等級制度

各仕事(=職務)そのものの重要度や困難度、責任度などにより、仕事(=職務)の価値を評価し、その仕事(=職務)の等級を定め、職務等級に応じて支給する給与制度です。
つまり、重要度や困難度、責任度などが高い仕事についている人が高い給料をもらうことができる、という仕組みです。
「職務給」の給与体系を中心に据えた人事制度を「職務等級制度」と呼んだりします。

仕事の価値に対して値段をつけるため、同じ仕事(=職務)については、誰がやっても同じ給与額になるわけです。
社員の中途入退社が多い中小企業やベンチャー企業には、便利な仕組みと言えます。
そして、良い悪いは別にして、高技能者が簡単な仕事(=職務)を担当していると低い給与額になるという特徴があります。
この「職務等級制度」の導入には、

(1)すべての社員の、すべての仕事を綿密に調べ、分析し、

(2)その情報を総合的にまとめた職務記述書を作成するとともに、

(3)仕事(=職務)を評価して、序列付けをする、

ということが必要になってきます。

<職務給、職務等級制度のメリット・デメリット>

メリット デメリット
  • 「給与=労働の対価」という関係が明確化される。
  • (仕事が一定なら)総人件費が一定で変わらない。
    → これは、年功制の要素が完全に払拭された仕組みであり、同じ仕事をしている限りは給与の上昇はなく、定期昇給の概念がないため。
  • 職務内容の見直しは給与の変更に直結することから、やりずらくなり新規分野への進出など環境変化の対応が難しくなる場合がある。
  • 配置転換に制約ができたり、決められた自分の仕事以外には消極的になりやすいなど、柔軟性に欠ける要素がある。

4.年俸制や業績連動型賞与

個人の評価や、会社の業績によって金額が変わる「成果主義」的な仕組みです。
支給額が、その支払いのつど決定されるという点や各期で完結するという点などが特徴としてあげられます。
その期の評価・業績をその期の給与や賞与に反映できるので、社員の感情に即すことができるということが利点としてあげられます。

ただし、次のようなネガティブな面もあるのでご注意を。

(1)社内がライバルである。

(2)利益が一定で、社員が増えた場合、1人当たりの支給額は減ることになる。

(3)「売上高」「粗利益率」を計算要素とした場合、直接賞与額を生み出す営業社員などの直接部門が、間接部門より社内ポジションが上のような風潮を生み出してしまう危険がある。

(4)個人評価がダウンしても会社業績がアップしたら本人賞与額がアップすることもある。

(5)個人評価がアップしても会社業績がダウンしたら本人賞与額がダウンすることもある。

「年俸制」「業績連動型賞与」は、支給金額が勝手にふくれあがることがないことから人件費管理上のメリットが大きく、数字的には経営の安定に多大に貢献します。

ただし、十分注意しなければならないキーポイントがあります。
2つの制度のキーポイントとは、「人事評価」です。
評価実務の運用に心が入っていないもの ― それが、人件費を切り下げる目的のものだったり、制度設計が自社とあっていないものだったりするものだと、これらの仕組みは経営の基盤を大きく揺るがすことになります。
導入する場合には、ぜひ『心ある真剣な人事評価』とセットで考えてください。

ここにあげたものは、それぞれメリット・デメリットがあります。
また運用が難しいものもあります。
そこで中小企業・ベンチャー企業でも運用ができる、人事評価制度を当社は提案しています。
特に次のような中小企業・ベンチャー企業に適しているものです。

  • 社員49人以下の中小企業・ベンチャー企業
  • 今は人事評価制度がなく導入に躊躇している中小企業・ベンチャー企業
  • 過去に人事評価制度を導入したけれどうまく運用できなかった中小企業・ベンチャー企業

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