フレックスタイム制はムダな残業時間を
減らす効果があります

フレックスタイム制の導入を検討しているという中小・ベンチャー企業の経営者向けに、次の項目ををご紹介します。

  1. フレックスタイム制の概要
  2. フレックスタイム制の特徴
  3. フレックスタイム制はどんな会社、部門、職種に合う
  4. フレックスタイム制を導入のためにすること
  5. フレックスタイム制の解説
  6. フレックスタイム制導入後、会社がやること

フレックスタイム制の概要

フレックスタイム制は、仕事を開始する時間と、仕事を終了する時間を、働く社員が自主的に決定することができる、というものです。
「この会社で、この時間働いてください」という「所定労働時間」は、各日・各週では定めず、1ヵ月以内の一定の期間の総労働時間として定めます。
ただし、その期間を平均して1週間当たり40時間を超えない範囲にしなければなりません。
(「平均して1週間当たり40時間を超えない範囲」については後述します)

フレックスタイム制の特徴

仕事の開始・終了の時間が社員本人に任せられていることで、
良い場合は、社員が自律的になることもある。
悪い場合は、ルーズになる可能性がある。

外部との連絡や接触が多い職務にはそぐわない面がある。

フレックスタイム制はどんな会社、部門、職種、社員に合うか

  • 各自の職業意識が高い組織である会社
  • 各社員が、ある程度他の社員とは独立して仕事を行える部門・職種
  • 仕事の処理に各個人の創意工夫、独創性、自主判断がある程度求められ、仕事の量よりも質、成果が期待される部門・職種
  • 育児や介護を行っている社員

(適している部門の具体例)

(イ) 研究開発の部門
(ロ) 設計、デザインの部門
(ハ)事務部門(総務、経理、人事など、生産現場の勤務体制と直結する必要のない業務)
(ニ) 企画、宣伝、調査の部門
(ホ) 営業販売部門(店頭販売は除く)
(ヘ)コンピュータのシステム開発、分析、ソフトウェアのプログラム作成の部門

(適さない職種)

  • 生産現場の流れ作業のように、その部署の全員がそろわないと業務遂行に支障をきたす職種
  • 外部からの電話への対応者、受付、秘書、店頭販売等、絶えず待機しなければならない職種
  • 決められたスケジュールに従って規則正しく巡視する必要がある警備や守衛といった職種
  • 出張、社内打合せ、社外打合せが多い職種

重要!

フレックスタイム制は、会社全体に適用しなければならないものではありません。
個人単位、部署・部門単位、職種単位、職場単位など適用単位を任意に設定できます。

フレックスタイム制を導入のためにすること

  • 労働時間の枠組みを決める。
  • ルールブックに載せ、社員の意思確認を書面にする。
    (就業規則に記載し、労使協定を結ぶ。)
  • 就業規則と労使協定を労働基準監督署へ届出る。

フレックスタイム制の解説

1.労働時間の枠組みについて

(1) 必ず定めなければならない事項と、(2) 採用する場合には定めておかなければならない事項があります。

(1) 必ず定めなければならない事項

@ 時間管理の単位となる期間を決めます。

これは、1ヵ月以内の任意の期間を設定できます。
これを「清算期間」といいます。

A 清算期間の総労働時間を決めます。

これが、清算期間における労働契約上の所定労働時間となります。
これには限度があります。(*後述)
B 標準となる1日の労働時間を決めます。

年次有給休暇や出張のとき、この時間を基準として、労働時間を計算します。

(2) 採用する場合に、定めなければならない事項

採用定するか、しないかは、任意です。
それぞれ、採用する場合には、その時間帯の開始と終了の時刻を決めます。
@ コアタイム

必ず会社に出勤している時間帯。
最低限、コアタイム開始時刻より前に出社し、コアタイム終了時刻より後に、退社しなければなりません。

午前10時〜午後3時には出勤している。それより前の出社、それより後の退社は自由。
コアタイム

A フレキシブルタイム
あまりにも早い出社や遅い退社を制限するため、限度を決めた出社時間帯と退社時間帯。朝のフレキシブルタイムより早い出社と、夜のフレキシブルタイムより遅い退社は認められません。

朝8時より前の出社、夜10時より後の退社はできない。
フレキシブルタイム

*さて、清算期間の総労働時間の限度の話しです。

清算期間の総労働時間は、清算期間を平均して1週間当たりの労働時間が、法定労働時間を超えないように設定しなければなりません。
その限度時間(=1週間当たりの平均労働時間が40時間以内になっている時間)は次のように算出します。

[算式] 40h ×(清算期間の暦日数 ÷ 7)=限度時間

この時間以下の時間を設定すれば、「1週間当たりの平均労働時間が40時間以内になっている」ということです。
具体的には、下の[表]のようになります。

月の日数 労働の限度
31日 177.1時間(177時間 8分)
30日 171.4時間(171時間25分)
29日 165.7時間(165時間42分)
28日 160.0時間

2.就業規則の記載事項や労使協定の協定事項

上記1の労働時間の枠組みのほか、
  • フレックスタイム制の対象となる社員の範囲
  • 労働時間の清算
について、協定します。

労働時間の清算については、2つの話しがあります。
1つは、実際の労働時間が、限度として決めた清算期間の総労働時間を超えた場合。
(=超過労働時間)
もう1つは、実際の労働時間が、限度として決めた清算期間の総労働時間に満たない場合。
(=不足労働時間)

(1) 超過労働時間

清算期間における総労働時間を超えて働いた時間については、その労働時間分の給与を支払わなければなりません。(算式や表で求めた時間以下の設定をしている場合)
さらに、その時間が清算期間平均して1週当たり法定労働時間を超える場合には、その超える部分の時間については、残業代(割増賃金25%以上など)の支払いが必要になります。(算式や表で求めた時間を超えた場合)
これは、通常の労働時間制でいう、残業代支払いと同じです。
計算の仕方が違うだけです。
考え方は分かりやすいと思います。

(2) 不足労働時間

実際の労働時間が、限度として決めた清算期間の総労働時間に満たない場合には、二通りの方法があります。

(イ)
その不足時間分の給与を控除する方法(ノーワーク・ノーペイ)
→ 就業規則にその旨の定めが必要です。

(ロ)
その期間の賃金支払日にその不足分を含めて支払い(=給与除せず)、次の清算期間中の総労働時間にその不足時間分多く働いてもらう方法。
ただし、その結果、次の清算期間が平均して法定労働時間を超える場合には、その超える部分については残業代の支払いが必要になります。

後者の話は、分かりますか?
「今月、働いた時間が短い。でも給料は満額払います。その代わり、来月多く働いてね。」
ここまでは分かります。
「でも、来月多く働くのはいいけれど、法定労働時間を超えたら、その分は残業代が発生するよ」と。
ちょっとオカシイですよね。理解に苦しむと思います。
でも、こう決められています。仕方ありません。
どちらかを選ぶことになります。

不足労働時間


3.就業規則と労使協定を労働基準監督署へ提出

フレックスタイム制を導入するためには、就業規則を一部変更することになります。
就業規則を変更した場合は、所轄の労働基準監督署に届け出ることになります。
その届出と同時に、フレックスタイム制の細部を決めた労使協定も提出することになります。
就業規則の変更については、変更届と、社員代表の意見書を添付します。

フレックスタイム制導入後、会社がやること

フレックスタイム制を導入した後、会社は何をすればいいのでしょうか。
簡単です。
「労働時間の管理」です。
やることとしては今までと変わらないんです。
会社は
  • 社員が自分で決めて行った、仕事の開始時間と終了時間を把握する。
  • それを1ヵ月でまとめる。
  • 残業が、あるか・ないか、判定する。それを給料に反映させる。
結局これは給与計算実務です。たったこれだけなのです。
管理責任者が、社員の労働時間を管理し、給与担当者が給与計算する。
基本は今までどおりです。

フレックスタイム制の話は以上とさせていただきます。

フレックスタイム制は、遅くまで残った時間分、別の日に早く帰宅することにより、残業時間と残業代を減らせる効果があります。
また、社員も自律的になり、自分の時間を持てるというメリットもあります。
そしてさらに、フレックスタイム制は社員に人気の制度なので、採用活動にもプラス材料になります。
うまくあてはまる会社であれば、導入をお勧めします。

当社は、フレックスタイム制を導入する中小・ベンチャー企業のお手伝いを承っております。
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