子どもの出生時における父親の休暇取得の促進


「次世代育成支援対策推進法は、21世紀の経営資源」
メルマガバックナンバー015号(H17.07.12)

あの人の言葉発見


日産自動車のカルロス・ゴーン社長は、プライベートタイムによく目撃されている。
「東京・多摩のサンリオピューロランドでアトラクションを見ていた」
「横浜Fマリノスの試合を観戦していた」
「東京ディズニーランドによく来ている」

インターネットの掲示板などの目撃情報には、アメリカの大学に在学中の長女を除く、15歳、12歳、10歳の3人の子どもや家族の姿が必ずある。
鋭い眼光の剛腕経営者というイメージと違う、「目じりの下がった優しい父親の顔」も共通している。

ゴーン社長は仕事を家に持ち込まない主義。
日産社内には、「社長に週末の仕事はいれない」「緊急時以外は自宅に電話をしない」というルールがある。

一方、ゴーン家にも約束事がある。
朝食は基本的に家族一緒。
週末も家族と過ごす。
中でも重要なのが、家族会議。
家族にかかわりのあることは、家族で話し合って決める。

ゴーン社長が、家族のきずな作りに腐心するのは、妻と4人のこどもを連れ、ブラジル、アメリカ、フランスそして1999年から日本と勤務地が変わった事情がある。
「家も友だちも変わり、子どもたちに厳しい環境を強いてきた」

もう1つ、経営者の判断がある。
「社員が仕事と家庭のバランスを失えば仕事の意欲も低下し、家庭も企業も敗者になる」



総務省・社会生活基本調査によると、家事・育児時間は、6歳未満の子どもがいる共働き世帯で、妻5時間(平日)に対し、夫は21分(同)。

NHK放送文化研究所による国際比較でも、男性の仕事時間と家事育児時間の割合がアメリカやデンマークで3対1なのに比べ、日本人は14対1と仕事偏重が顕著だ。
「剛腕経営者 優しい父の顔」
家族 きずなを求めて5
読売新聞 17.1.7 一面

制度のしくみ


    〔1〕次世代法関連
     1.次世代育成支援対策推進法
     2.行動計画策定指針
     3.行動計画内容
    〔2〕関係法令
     1.育児・介護休業法
     2.労働基準法
     3.男女雇用機会均等法
    〔3〕労働社会保険
     1.給付
     2.保険料等
    〔4〕助成金、奨励金
    〔5〕法人税
    〔6〕次世代法認定企業


〔1〕次世代法関連 3.行動計画内容

〔子どもの出生時における父親の休暇取得の促進〕

ペコポン
ねぇ、ぼんさく。スーパーとかで買い物する?

ぼんさく
何を唐突に。するよ。

ペコポン
スーパーで特売品ってあるよね?
今日の取り上げる項目は、行動計画内容での特売品みたいなものだよ。

ぼんさく
何それ? 何それ?
お買い得ってこと? そういうこと?

ペコポン
お話ししましょう。

この項目は、子どもが生まれるとき、その父親である男性社員が、例えば、出産に立ち会えるなどできるように休暇をとれる環境を整えよう、というもの。

出生のときに、休暇を取りやすいようにすれば、とりあえずは項目クリア。

ぼんさく
どんなことをすればいいの?

ペコポン
例えば
・「配偶者出産休暇」や「出産立会い休暇」などを新設するもよし
・「年次有給休暇」の取得を促進するもよし
・「育児休暇」の初日として取得を促進するよし

この休暇自体は、特に法律で決められているものでは、ないんだ。
だから「配偶者出産休暇」などの新設の場合、詳細は結構自由に決められる。

その休暇に対し給料を払うか払わないか、については
・「配偶者出産休暇」などの新設の場合、有給でも無給でもいいことになる。

余談になるとは思うけど、出産立会いのため、と称して“強制的に”休ませる場合は、有給にするか、最低でも休んだ日については、給料の6割は支給しないといけないよ。

ぼんさく
まぁ、それはないだろうけどね。

ペコポン
まあね。

ぼんさく
休みの日数も、何日でもいいってこと?

ペコポン
一応「指針」の中の、例では「5日程度」とある。

でも5日を切っても、認定基準に抵触することは、ない。
極端な話、1日でもOK、ということになる。

ぼんさく
お役所は、イイ顔しなさそうだね(笑)

ペコポン
新設ではなく、それぞれの休暇取得の促進の採用するなら
・「年次有給休暇」とした場合は、→ 労働基準法の
・「育児休暇」とした場合は、→ 育児介護休業法の
適用を受けることになるから、気を付けて。

だから、給料の支払いについては、
・「年次有給休暇」にする場合は、当然ながら有給
・「育児休暇」の場合には、有給でもヨシ、無給でもヨシ
となる。

休暇日数については、
・「育児休暇」にする場合
育児介護休業法に決められた期間があるので、これも法律に沿うようにしなければならない。

ぼんさく
ちょっと整理するね。

「配偶者出産休暇」(無給)など新設
「配偶者出産休暇」(有給)など新設
「年次有給休暇」の取得促進
「育児休暇」(無給)の取得促進
「育児休暇」(有給)の取得促進
のパターンが考えられるってことだね。

ペコポン
そういうこと。
これらは“制度として”比較的導入しやすいと思うよ。

とは言っても、別に導入を勧めているワケじゃないよ。
他にあげられている行動計画内容と比べると、かなり導入しやすい部類なんじゃないかな、というだけ。

ぼんさく
それで“特売品”って言ってたのか。

ペコポン
さて、「配偶者出産休暇」など新設する場合には、就業規則などに規定することになる。

その際、こんなことを規定するといいでしょう。
・対象社員・・だれが
・適用要件・・どうなったとき
・休暇開始・・いつから
・休暇日数・・いつまで
・手続き・・・どうやって
・有給、無給の区別
・除外規定・・「どうしてもってときは、休めない場合もあるよ」と。

「どうしてもってとき」は、意味としてはかなりの例外。
イザっていうときのためにね。

ぼんさく
他に注意点ある?

ペコポン
「年次有給休暇」の取得促進の場合。
・まだ年次有給休暇をとる権利のない人や、
・その年の年次有給休暇を消化しきってしまっている人など
に対しても、休みが取れるように工夫をしたほうがいいね。

じゃないと、出生時の休暇取得促進という趣旨に合わない、としてケチつけられなくもない。

ぼんさく
ちょっと疑問に思うことがあるんだけれど。

育児休暇って、子どもが生まれたら取れるんだよね?
なのに「配偶者出産休暇」って意味あるの?

ペコポン
育児休暇とは別に導入することに、効果はあるよ。

育児休暇の取得は、法律では原則として1回に限られている。
出産のときに、ほんの数日間、育児休暇として休んですぐ仕事に戻った場合、その後は、育児休暇がとれないことになる。
(会社が認めれば、もちろん取得OK)

だから、出産のとき数日間休んで、育児休暇は、
・その後改めて本格的にとりたい
(前半6ヵ月は妻、後半6ヵ月は夫、などのパターン)
・その後必要な時にとりたい
・1歳誕生日の前日にとっている状態にしたい
などのニーズに応えることができることになる。

認定基準の「育休取得、男性1人以上」の項目についても工夫次第で対処できることになるよ。

ぼんさく
なるほでね。
ところで「1歳誕生日の前日」というのは?

ペコポン
「育児介護休業法」の改正によって、意味のある日なんだ。
育児介護休業法編をお楽しみに〜。

ぼんさく
またか。

わたしの後記


年上の人物を「友人」と呼ぶことは失礼にあたる、と考える人は日本には多いのでしょう。
でも許されるなら3歳年上の彼を、友人と呼びたい。

その彼は、同業者で、実はこのメルマガの読者でもある人。
彼には幼い子どもがいます。

彼の働き方はこうです。
昼間 キッチリ仕事をこなし
夜  夕食を家族と一緒にとり
風呂 子どもと入り、
9時頃には、子どもと布団の中。
子どもが寝付くと、彼は起き上がり、ひと仕事。
就寝。
そして翌日。早朝から仕事にとりかかります。
午前4時、彼からのメールが届くこともあります。

素敵です。
子どもとの時間を守るため、自分の時間の使い方を工夫する。

カッコイイ。
良いとか、悪いとかではなく、人に勧めたいとか、世に広めたいとかではなく。

好きです、こういう人。こういうオヤジ。



出生時の休暇。
あったら、世のオトコはどう使うんだろう。

出産に、立会うのかな、立会いまではしないのかな。
立ち会う気のない人も、休暇があるために、立ち会うハメになったりして。

世の奥さん方々は、「立ち会え派」が多いのかな。
「苦しい思いしている自分を、シッカリその目で見ておきなさい」って。

まぁ、ふたりで決めてくださいな。穏便に。
ちょっと想像するに、出産に立ち会えば子育て意識のない人は、その意識が芽生えるんだろうな、子育て意識のある人はさらに強くなるんだろうな、と思う。

それは、やっぱイイことなんだろうな。
そういえば「友人」の彼は、立ち会ったのだろうか?



  • 採用テーマ
  • 人事評価テーマ
  • 残業代テーマ
  • 仕事と家庭の両立

数事と事株式会社
Copyright:(C) 2012 Kazuo Omata All Rights Reserved.