男性の育児休業取得の促進


「次世代育成支援対策推進法は、21世紀の経営資源」
メルマガバックナンバー017号(H17.07.26)

あの人の言葉発見


○ 孤独感解消へ仲間結束

生後10ヵ月の男の子がよろよろと立ち上がると、パパたちから歓声があがった。
「立っちができた」

4月中旬、ソニー経理部に勤める神奈川県逗子市の男性Aさん(30)宅に、パパ4人、子ども5人が集まった。
Aさんが9ヵ月間の育児休業中に仲間に呼びかけて作った「子連れオオカミの会」のメンバーだ。

「父親たちが子育てを語り合うことで、男が育児参加しやすい企業風土作りのきっかけになればと思うんです」

Aさんは、職場では初の男性の育休取得者。
保健師の妻(29)と交代し、2人目の娘が4ヵ月になる03年7月から休んだ。

当初、育休中に語学や会計の勉強もしようと思ったが、実際は大変だった。
娘は粉ミルクもお茶も飲まない。
昼は2歳上の長男も連れ、車で妻の職場に行き授乳しなければならない。
買い物途中で二人がぐずると「おっぱいの時間じゃないの」と通りがかりの人から言われた。

そんな時、妻の友達の夫と飲みに行き、気持ちがふっきれ、「子連れオオカミの会」を立ち上げた。
今や会員約20人。
Aさんは
「家族4人でいつも食事ができたのは、貴重だった。今後、男性で育休を取りたい人がいたら、精神的な負担や孤独感を取り除き、支援したい」と話す。

○ 査定急落「昇進より子供」

だが、育休が会社内の評価や昇進などに影響する会社は多い。
神奈川県の会社員Bさん(38)は育休復帰後の査定にため息をついた。

評価は5段階の「C」から、最低の「E」に落ちていた。
6年前のことだ。
三つ子が誕生し、保育士として働く妻の復職にあわせ、男性社員としては初の育休をとっていた。

3ヵ月の育休がこれほどマイナスなら、取得前に説明をすべきではないかと会社に詰め寄ったが、人事部は「評価は落ちざるをえない」と繰り返すだけ。

育休前は昇進にも関心はあったが、今は残業せず5時には退社。
学童保育の迎えに行ったり、子どもの宿題を見たり。

出世した同期との年収差は100万円以上ある。
昨年、人事部に提出する書類に「昇格試験は受けません」と書いた。

「私にとって、子どもの成長にかかわる時間は、年収アップや出世より大事なんです」

○ 考課見直し 社員補充も

一方で、子育てが「マイナス」にならないよう、制度を見直す企業も出始めている。

帝人グループは02年、育休中の人事考課を昇進昇級の要件に含めないよう制度を改めた。
グループの昇進昇級は直近2年間の考課を参考にするが、育休を取ると要件を満たせず、昇進が遅れることが多かった。

広報・IR室は「育休にかかわらず、実力のある人が力を発揮できる風土作りが大切」と話す。

東京海上日動は、地域限定で働く社員が育休をとる際、社員を補充する運用を昨秋から徐々に広げている。

これまで系列の派遣会社から代替要員が入ったが、派遣社員には専門的な知識が求められる折衝業務は任せにくく、周囲にかかる負担が大きかった。

7人の地域型社員のうち、今年2人が育休を取る横浜のある課では、新たに社員2人が配属された。

月平均80件の自動車事故の折衝業務をする同課の女性(29)は
「おめでたい話なのに、2人減ったらどうなるかと心配していました。これで、自分に子どもができても安心して休みをとれます」と話す。
「育休パパ泣き笑い」
変わる?子育ての風景 下
朝日新聞 17.4.28 生活

制度のしくみ


    〔1〕次世代法関連
     1.次世代育成支援対策推進法
     2.行動計画策定指針
     3.行動計画内容
    〔2〕関係法令
     1.育児・介護休業法
     2.労働基準法
     3.男女雇用機会均等法
    〔3〕労働社会保険
     1.給付
     2.保険料等
    〔4〕助成金、奨励金
    〔5〕法人税
    〔6〕次世代法認定企業


〔1〕次世代法関連 3.行動計画内容

〔育児休業を取得しやすく、職場復帰しやすい環境の整備〕

ペコポン
この項目には小項目が5つある。
  • 男性の育児休業取得の促進
  • 育児休業中の待遇や育児休業後の労働条件についての周知
  • 育児休業期間中の、代替要員の確保
  • 育児休業をしている社員の職業能力の開発・維持・向上
  • 育児休業後の、原職または原職相当職への復帰
これを1つずつ見ていきます。

ぼんさく
よろしくー。


・男性の育児休業取得の促進

ペコポン
「育児休業規程」が会社にあることを前提に話しを進めるね。

「育児休業規程」には、『育児休暇の対象社員』が決められているはず。
当然ながら、そこには「女性社員に限る」とも「男性社員は育休は取れない」とも書いていないでしょう。

ぼんさく
それなのに、男性が育児休暇をとることは、まだまだ少ない。
理由はいっぱいあると思うけど、「取りたいのに取れない」人も少なくないのでは?

ペコポン
ただ前例がない、という理由や、そもそも男が育休を取るなんて発想自体がない、ことが原因でね。
それでは男性の育児休暇取得が浸透しない。

そこで、会社が改めて「男性も育児休暇取得できるんだよ」と念押ししてあげるといいだろう。
「じゃ、取ろうか」となるかもしれない。

それがまず第一歩。
これは比較的単純なパターン。解決もしやすい。

ぼんさく
そう簡単なものだけじゃないだろうね。

ペコポン
ここに、朝日新聞社が行った調査がある。
男性社員が、育児休暇を取らない原因を調べたもの。

題して「男性の育児休暇取得の壁」。
対象は、大企業100社(複数回答)。

壁になっていること
58社 休業中の所得保障
31社 代替要員の確保
16社 管理職の理解不足
09社 賞与や退職金の算定
06社 昇格等の取り扱い
03社 コスト削減と逆行
37社 その他 

それぞれについては、該当する回に話すとして、今回は、取り組みやすいところを攻めてみよう。
「管理職の理解不足」

ぼんさく
この調査は、大企業対象だから[管理職=中高年層]って言えるよね。

ペコポン
ぼんさく、スルドイ!

ぼんさく
中小・ベンチャーでは、30代管理職者も珍しくない。
自分がまさに「育児支援」される対象にもなるし、新しい考え方も比較的対応しやすいから、そんな管理職者だったら、必ずしも、あてはまらないだろうね。

やっぱり考え方として、中高年層は「男が育児なんて」「仕事が一番でなくてどうする」という感覚の人が、まだ多いかもしれない。

ペコポン
ま、ちょっと中高年層を悪者にしちゃったけど、
・対象になる男性社員本人
・年齢に関係なく管理職者
・男性女性に関係なく職場の人たち
の意識改革を促せば、少なくとも「理解不足」は、なくせそう。

ぼんさく
その意識改革を目的とした
・ミーティングや社内への伝達
・チラシ配布や社内報掲載
・研修や講習会の実施
などは、程度の差に関係なくこの項目に該当しそうだね。

ペコポン
さて、もう1つ。ヒントになる調査。
同じく朝日新聞社のものだ。
「男性の育休取得者数の多い企業」

初の年 累計 最短期間 最長期間
 JR東日本 92年〜 60人 ――― ―――
 東芝 93年〜 24人 2週間 9ヵ月
 NEC 92年〜 15人 1ヵ月 7ヵ月
 富士通 95年〜 15人 13日 13ヵ月(397日)
 ソニー 96年〜 11人 28日 13ヵ月(391日)
 トヨタ 99年〜 11人 約1ヵ月 約1年
 東京電力 99年〜 11人 ――― ―――

ぼんさく
男性の育休取得は、電機や運輸・自動車業界で多いね。

ペコポン
現場社員や技術職者が比較的取りやすいのでは、との見方がある。

でもまぁ、人数は気にしなくてもいいでしょ。
社員数が多いんだから、取得者数も多いのは当たり前。

それよりも「最短期間」を見て。
一番短くて、2週間程度。

この期間が、「育児」に効果があるのか、「奥さん」は満足しているのか、は別問題として、取らない・取れない状況よりも、比較にならないほど、いいことだ。

ぼんさく
男性社員本人も、なんとかなる期間なのかもね。

ペコポン
だから、会社は、男性社員に対して「短くてもいいんだよ」と教えてあげることも大事だね。
もちろん「長期間取るなよ」というニュアンスにならないようにね。
あくまで、固定観念をなくして、柔軟な発想でという趣旨で。

ぼんさく
男性社員が育児休暇を取ってくれたら、「認定」の基準も1つ満たすことになるもんね。

ペコポン
まぁ、そういうことは、今は置いといて・・・

(お断り)
紹介した2つの調査は、朝日新聞 17.4.28 生活に掲載されたものを引用させていただきました。

わたしの後記


「子連れオオカミの会」素晴らしいネーミングですね。
(上記「あの人の言葉発見」コーナー参照)
見た瞬間に好きになりました。

「オオカミ」で「男性」を、「子連れ」で「子育て」をよく表しています。
しかも、凶暴なイメージの「オオカミ」と、愛情たっぷりの「子育て」の、ギャップがまたいい。

実は紹介された朝日新聞には、写真も掲載されています。
メンバーの4人、自分の子ども抱っこして笑ってる。

メンバーのほとんどは、私と同世代だと思います。
となると、時代劇「子連れ狼」については、よくて名前を知っているくらい。
知らないメンバーもいるでしょう。
ましてや、思い入れがあるとも思いません。

よくつけたなぁって感心してしまいます。



携帯電話の「iモード」の生みの親、松永真理氏はその著書「iモード事件」(角川書店)で言っています。

『「もの」は名前を持って初めて、生きはじめる。名前を持って初めて、身近になり人に愛される。それは人も物も同じだ。こんな風に育つように、こんな風に育ってほしい。名付け親は、自分の生んだ子供に、さまざまな期待をこめて、名前を付ける。

私たちの「新しい携帯電話」は、どんな風であってほしいか、どんな風に育ってほしいか。私たちはとことん議論した。』

そして貴重なヒントもくれます。

『私は日本で受け入れられる名前は七五調、中でも五文字が多いと思っている。「とらばーゆ」「コカコーラ」という風に。』

新規メディア、新規サービス、新規事業を立ち上げるため尽力した松永氏は、そのネーミングの大切さを、説いています。

そう。
それはまぎれもなく「経営事項」。

あなたの取り扱っている「商品」「サービス」の「名前」は、どのようにして付けられていますか?



中身は変わらないのに、「名前」を変えただけで、爆発的に売れた、というエピソードは、枚挙にいとまがありません。

紳士用靴下の「通勤快足」しかり。
大ベストセラー小説「世界の中心で愛を叫ぶ」しかり。
「セカチュー」の出版前のタイトルは、「恋するソクラテス」だったと言います。

神田昌典氏の「60分間・企業ダントツ化プロジェクト」(ダイヤモンド社)には、斎藤一人氏のネーミングの秀逸さが紹介されています。

斎藤一人氏といえば、株や土地の売却益を含まず、商売の利益だけで、毎年長者番付に名を連ねる本当の商売人日本一と評判の人物です。

その斎藤氏の、成功要因の1つが、天才的なネーミングのセンスだ、というワケです。
お金使わない、頭使った経営改善。
これならスグできそうですね。



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